
二子玉川で30年以上にわたり愛され続けてきた老舗の定食屋「たぬき」が、2023年11月20日をもって閉店しました。
店先には「30年間ありがとうございました 感謝」と手書きの貼り紙が掲示され、地域の人々に深い別れを告げています。
「たぬき」は、二子玉川駅から徒歩数分の住宅街に佇む昔ながらの食堂。
定食を中心とした温かみのある料理と、飾らない雰囲気で、学生や会社員、地域住民まで幅広い層に親しまれてきました。
特にランチタイムは賑わい、定食を求めて訪れる人の行列ができることも珍しくありませんでした。
看板メニューはボリューム満点の定食類。
唐揚げや焼き魚、しょうが焼きなど、いわゆる「おふくろの味」を思わせる献立が並び、栄養バランスも考えられた一汁三菜スタイル。
食べログの口コミでも「値段が手頃で満足度が高い」「仕事帰りにほっと一息つける店」といった声が多く寄せられていました。
華やかなレストランやカフェが次々と増える二子玉川の街にあって、「たぬき」はどこか懐かしく、肩肘張らずに利用できる貴重な存在だったのです。
閉店の理由について公式な説明はありませんが、30年という年月を考えると、街の環境変化が影響している可能性もあります。
二子玉川は近年、大規模な再開発によって洗練された商業施設や高級マンションが立ち並ぶ街へと進化してきました。
そうした都市の変化の中で、「たぬき」のような昔ながらの定食屋が少しずつ姿を消していくことは、時代の移り変わりを象徴しているのかもしれません。
しかし、地域の人々にとって「たぬき」は単なる飲食店ではなく、生活の一部でした。
学生時代に仲間と食べた思い出の定食、会社帰りに立ち寄って空腹を満たした一皿、家族で囲んだ温かな食卓。
数え切れない日常の場面を支えてきた存在だったのです。
閉店を惜しむ声は多く、「またあの味が食べたい」「寂しい」といった書き込みがSNSでも散見されます。
二子玉川の街並みが変わり続ける中でも、「たぬき」で過ごしたひとときは多くの人の心に残り続けるでしょう。
30年間にわたる営業を終えた「たぬき」。
その歩みは静かに幕を閉じましたが、地域に根ざした食堂としての温もりは、今後も人々の記憶の中で生き続けるに違いありません。