時々むしょうにカレーが恋しくなる。そんなとき頭に浮かぶのは、いつもMottiだ。
カレーライスとは違う“カレー”を最初に体験したのはいつだったか。
記憶をたどると、たぶんMottiの一皿だった気がする。
店先に立つだけで、鼻の奥をすっとスパイスが抜ける。
席に着き、外を眺める。相変わらず、いい眺めだ。
メニューを前に少しだけ迷ったふりをするが、結局はバターチキンに落ち着く。

初めてここで食べた日、驚いたのは辛さではなく“構造”だった。
カレーは“かける”ものではなく、“すくって重ねる”料理。
ふくらんだナンの弾力、焼き目の香ばしさ、トマトと生クリームのコク、タンドールの香り——それらが口の中で層をつくる。

ふっくらと膨らんだナンをちぎる。表面は香ばしく、中はもっちり。
そのひとかけをカレーにそっと沈め、すくい上げる。
白米にかけて食べる“カレー”とは違い、ナンがソースをやさしく抱きとめる。
ひと口、もうひと口。気づけば皿のオレンジ色は消え、指先に残る香りだけが「また来い」と告げてくる。

2007年6月30日のMotti
古いデジカメの写真を見返したら、Dogwood PlazaのショットにまぎれてMottiのバターチキンがあった。
撮影日は2007年6月30日。
あれから18年。
変わった景色もあるけれど、ここでの最初のひと口だけは、今も同じ場所へ連れていってくれる。

お肉の無骨さはなくなったけど、それは時代と共に洗練された結果だろう
天気のいい日に、あの中庭で食べるカレー

ふと昔を思い出す
2007年
このカレーを食べていたときには、今の二子玉川の姿を想像すらできなかっただろう

毎日は食べないのだが、時々ふらっと通い続けるお店になるのだろう
ごちそうさまでした