最近、玉川高島屋の地下を歩いて「あれっ、あの店なくなっている」「工事中?」「ここ仮設なの?」と戸惑った方、多いのではないでしょうか。
実はこれ、単なる改装ではありません。2026年1月から2027年6月まで、約1年半をかけて進む大プロジェクトの途中です。しかも本館B1だけでなく、南館B1もここ1年半ほどで段階的に入れ替わっています。さらに駅をはさんで反対側の二子玉川ライズも、開業15周年を迎えて新店ラッシュ中。ニコタマ全体の地下商圏が、いま大きく動いている時期なんです。
連休前にざっと整理しておきます。
1. 玉川高島屋本館B1の大改装、全体像はこうです
まず時間軸を押さえておきましょう。
| 工区 | 時期 | 何が起きるか |
|---|---|---|
| 第1期 | 2026年1月19日 〜 6月中旬 | 一部エリア閉鎖、仮設店舗へ大移動 |
| 第2期 | 2026年6月中旬 〜 2027年2月下旬 | 第1期エリアが先行オープン、玉突きで次エリア閉鎖 |
| 第3期 | 2027年3月 〜 6月下旬 | 最終エリア改修、グランドオープンへ |
ポイントは「一気に全部閉めない」という運営判断です。一気に閉めるとライズ側に客が流れて、リニューアル後も戻ってこない可能性が高い。だから明治屋・中島水産・サンフレッシュ・人形町今半・高島屋ファーム・竹紫亭といった生鮮スーパー系は仮設のまま営業を継続しています。日常使いの動線を守る、現実的な判断です。
逆に言うと、4月末時点の地下の風景はまだ「最終形」ではありません。改装フェーズの途中スナップショットとして見るのが正確です。
2. 完全撤退した老舗ブランドが教えてくれる、デパ地下の変化
今回の改装で完全に営業終了になった店、結構多いです。並べてみると、ちょっと驚きます。
和菓子・銘菓系
千住宿 喜田家、笹屋伊織、tamayose、太郎、村の梅
洋菓子・スイーツ系
TWG Tea、グマイナー、ゴンチャロフ、メリーチョコレート
惣菜・名産品系
北海道食品庫、オークスハート、江政商店、雲月、荻野屋、柿安、京つけもの西利、錦松梅、日本ばし大増、ローストビーフの店鎌倉山
この顔ぶれ、何が共通しているか分かりますか。ほぼ全部「中元・歳暮・手土産」のフォーマルギフト需要を支えてきた老舗なんです。ゴンチャロフ、メリーチョコレート、錦松梅、TWG Tea……どれも贈答品の定番ブランド。
ここから読み取れるのは、デパ地下に求められるものが「儀礼的な贈り物」から「日常の延長にあるご褒美的な食体験」に変わってきているということです。改装で残るのは「自分用の中食・プレミアム食材」系で、贈答系は思い切って整理。これは玉川高島屋に限らず、全国のデパ地下で進んでいる構造変化の最前線にニコタマがいる、ということでもあります。
ちなみに仮設で営業を継続している店もチェックしておくと便利です。
- 南館1F特設会場:赤坂柿山、上野みはし、榮太樓總本鋪、加賀藩御用菓子司 森八、くら吉、虎ノ門 岡埜栄泉、御門屋
- 本館仮設エリア(和洋菓子):とらや、アンリ・シャルパンティエ、ヴィタメール、銀座ウエスト、グラマシーニューヨーク、ゴディバ、デメル、トップス、ヨックモック など
- 本館仮設エリア(惣菜・デリ):RF1、華正樓、沈菜館、京粕漬魚久、神戸コロッケ、三代目たいめいけん、新潟 加島屋、ブッツデリカテッセン、ペック、横浜中華街王朝
- 一時休業(再開予定):ベジテリア、銀座あけぼの、モロゾフ
「あの店どこに行った?」と思ったら、まずは南館1Fと本館仮設をのぞいてみてください。
3. 笹屋伊織の電撃移転——今回いちばん象徴的な動き
この記事で一番取り上げたかったのが、この件です。
1716年創業の京都の老舗和菓子司・笹屋伊織。玉川高島屋を退店した直後の2026年4月16日、二子玉川ライズの東急フードショーB1にNEW OPENしています。
距離にして駅をはさんで反対側、徒歩数分。公式リリースは「移転」とは書いていませんが、利用者目線では完全に駅周辺地下での水平移動です。
これが何を意味するか。テナント企業にとって、1年半も仮設→閉鎖→仮設……を繰り返す改装期間に付き合うのは、売上もスタッフ雇用も大きなリスクです。笹屋伊織は安定した営業環境を求めて、能動的に出店先をスイッチしたわけです。
おそらく他の有力ブランドでも、同じ判断が連鎖する可能性があります。第2期工事(6月中旬〜)でさらに区画が動くので、また別のブランドが「ライズに引っ越し」を選ぶかもしれません。高島屋からライズへの頭脳流出ともいえる構図が、これからもう少し続く可能性があります。
4. 実は南館B1も静かに刷新中
本館B1の話題でかすんでいますが、南館B1もここ1年半で段階的に組み変わっています。地味ですが、見落とせません。
- 2024年9月:KITANO ACE リニューアル
- 2024年9月:F&F 新装開店
- 2024年11月:PAUL リニューアル
- 2025年3月:堀口珈琲 新規出店
- 2026年4月15日:カルディコーヒーファーム リフレッシュオープン
- 2026年4月15日:レスポートサック 新規出店
連休中に地下を歩くなら、本館B1の改装エリアだけでなく南館B1も合わせて見ると新しい発見があります。堀口珈琲のテイスティングスタンドなど、ニコタマで定着してきたコーヒー文化との相性も良さそうです。
5. ライズ側は15周年でアクセル全開
3月に開業15周年を迎えたライズ側も、4〜6月にかけて新店ラッシュをかけています。
- 4月15日:AKOMEYA TOKYO(ステーションマーケット1F)
- 4月16日:京菓匠 笹屋伊織(東急フードショーB1)
- 4月23日:エリオポール(タウンフロント1F)/コロンビア(タウンフロント3F)
- 4月30日:カーディオ・バー フィット(リバーフロント5F)
- 5月2日:LOWYA(タウンフロント5F)
- 5月27日:ディズニーストア(予定)
- 6月5日:THE STAND BY KOBEYA(ステーションマーケット1F/駅ナカベーカリー)
注目はLOWYA。元々はオンライン販売中心のD2C家具ブランドで、近年は実店舗展開を加速させている存在です。ニューファミリー・DINKS層が多いニコタマの土地柄、「オンラインで気になっていた家具を実際に座って確かめる」というOMO(Online Merges with Offline)的な使い方ができるようになります。
AKOMEYA TOKYOもニコタマの食意識と相性がよく、THE STAND BY KOBEYAは田園都市線・大井町線ユーザーの朝食および手土産需要を直撃する立地。カーディオ・バー フィットはクラシックバレエの動きを取り入れたハリウッド発祥のバーエクササイズで、ウェルネス文脈をしっかり押さえています。それぞれターゲットがクリアで、ライズ側のリーシングのうまさが感じられる布陣です。
6. 玉川高島屋側も体験型で攻めています
「玉川高島屋=守り、ライズ=攻め」という単純な構図でもありません。高島屋側も非・食料品エリアでは、攻めの一手を打っています。
- 4月24日:ニューバランス南館2F リニューアル
3Dスキャンで足のサイズをミリ単位で計測し、サイズ予想が左右ともに±2mm以内なら記念インソールがもらえる「Fit & Comfort Challenge」を4/30まで開催。EC時代に「店舗でしかできない体験」を打ち出す好例です。 - 4月29日:カナダグース 本館1F
クリエイティブディレクターのハイダー・アッカーマン氏が手掛ける初のインラインコレクション「2026年春夏コレクション」を大々的に展開。ライトダウンやレインウエア、アクセサリー、キッズコレクションまで通年ラインナップを揃え、ブランドが「ライフスタイル系」に脱皮した象徴的な店舗です。 - 4月27日〜9月30日:FUTAKO BEER TERRACE 南館7F屋上
ふたこ麦麦公社プロデュース。4/27・28がプレオープン、4/29から本格オープン。ふたこビール5種、ホットドッグ、骨付きソーセージ、自家製ソースの「麦ちゃんのかき氷」などを提供。デザイン顧問の黒岩美桜氏と二子玉川在住のアートディレクター増田総成氏が共同制作した「夏と氷」をテーマとするアート作品も展示される、地域共生型のプレイスメイキングです。
カナダグースの本館1F出店は、けっこう象徴的だと思います。あの場所はラグジュアリーゾーンですから、カナダグースが「アウター屋」ではなく「ハイエンド・ライフスタイルブランド」として認められたということです。
7. これから半年がいちばん面白い
第2期工事は2026年6月中旬〜2027年2月下旬。同時期から、第1期で完成した新エリアが順次リニューアルオープンします。
求人情報ベースですが、ブッツ・デリカテッセンが6月リニューアル予定との情報も出ています(公式の店名アナウンスはまだですので、参考程度に)。施設側の「6月中旬から順次オープン」スケジュールとも整合しています。
地元の声を玉川高島屋のコミュニティサイト「たまがわLOOP」で見ると、「鈴懸(新宿伊勢丹で行列の絶えない和菓子店)」「ジョアン(銀座三越のベーカリー)」といった都心トップクラスの行列ブランドの誘致を望む声が出ています。これはニコタマ住民の審美眼の高さを示す一例です。「綺麗になればいい」ではなく、「エッジの効いたラインナップを見せろ」という要求です。
高島屋がこの期待にどう応えるか。第2期で発表される新規導入ブランドの顔ぶれが、これからのデパ地下の方向性を決める分水嶺になります。
まとめ:2026年のニコタマは「街がアップデート」されている最前線
整理するとこんな構造です。
- 玉川高島屋本館B1:1年半の大改装中。贈答系老舗が一斉退店し、デパ地下の意味が変わる転換点
- 笹屋伊織:高島屋からライズへの電撃移転。今後も連鎖する可能性あり
- 南館B1:本館の陰で静かに刷新進行中。要チェック
- ライズ:15周年で全方位展開。LOWYA、AKOMEYA、ディズニー、神戸屋……
- 高島屋上層階:ニューバランス、カナダグース、屋上ビアテラスで体験型に振っている
- 6月以降:第2期スタート。新店発表が本番
しばらくは月単位で景色が変わるので、地下に行くたびに「先月と違う」を楽しめる時期です。連休、ちょっと地下を散歩してみるのもおすすめです。
※本記事は2026年4月29日時点の情報をもとに作成しています。改装スケジュールやテナント情報は変更される可能性があります。最新情報は玉川高島屋S・C公式・二子玉川ライズ公式でご確認ください。